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 «僕らの書展2010が終わり、1週間が経ちました。あっという間の3日間でした。昨年の夏「自分たちの手で展覧会を開こう」と意気込み、何のプランも無しに会場を予約しました。それから出品者を集め、何度も錬成会や批評会を行い、ようやく、平成22年8月27日〜29日に栃木県総合文化センターで開催することが出来ました。この展覧会を企画するにあたって、出品者を「平成生まれ」の若者に限定しようと考えました。無名な若者が、「書が大好き」という気持ちだけでどこまでやれるのか、挑戦したかったのです。»とハタチの自分はある雑誌に記している。高校時代、書道部に入部したことをきっかけに書に没頭していった。大学でも書を専攻し、書きまくった。それと同時に書壇の内情や社会における書の位置についても知るようになる。  ん?書はこんなに窮屈でつまらないのか?

 自分たちの手ですべてを実行する。各自が責任を持って作品を発表する。

 同じ感覚を共有できる若手書家を探して声を掛けた。自分ひとりでやっていくには自信がないし、個より集団で挑んだほうがいいだろうと考えた。活動期間は10年間と限定する。書に対する情熱のようなものがずっと続くかどうかわからないし、そのうち仕事や結婚、出産など書以外に専念しなければならないことが出てくるはずだ。10年と活動期間を限定した上でどこまでやれるか勝負してみよう。

 書の作品理念やコンセプトについては展覧会を開催するごとに徐々に決まっていった。「自由な若い感性による新しい書表現」を指標しはじめたのは2014年ごろからで、新規参入者や脱退者も多くあった。

 

 2009年に結成した僕らの書展の活動も10年が経過する。結成当初は10代の若者であったメンバーも20代後半となっている。「平成生まれ」「若者」「感性」「新しい」という当時の売り文句はもう使えない。今後の“イロハ”を考える。

 田宮文平(書評論家)は2008年、競書雑誌『今日の学書』上で、ある書展評中に«現代の書(壇)のエネルギーが社会情勢を反映して、いささか低下するなかで、挑戦する力と持続力との凄まじさを感じた。それにもかかわらず表現としては依然、手島右卿、山﨑大抱のエピゴーネンにとどまっていること。それをどう克服するかが、大きな課題であるとおもった。それには用具用材を含めて書風に追随するのではなく、書作の方法論に立ちかえって新しい領域を開拓すべきではないか、と考えるのである。»と課題を提示している。また2018年12月発行No.170『美術運動史』誌上にて、志田康宏(栃木県立美術館学芸員)は«「僕らの書展2018」出品作品は、率直に言って、彼らの持つ意義深い問題意識に反して、従来の現代書の系譜から抜け出せていないものであったことは否めない。(中略)「自由な若い感性」を武器にしてはいるものの、作品にはあまり自由や若さが感じられない。彼らが批判する社中のごとく、素直に「現代書」という手本をなぞっているようにすら見える。主張が挑戦的であるからこそ、逆説的に作品の古くささが際立ってしまっているとすら言える。»と指摘している。これらをどのように解決していくか。

 

 書の場合、師匠から弟子へは技法や理論の一方向的な教授がほとんどである。古典古筆の臨書においても師風が影響する。それは明治以降そして戦後の書が脈々と続いている証である。日本文化の継承は概してこのようである。ただし、これは師弟関係が書の継承のみを念頭においた関係である場合に限って可能になる。覇権争い、組織化、数の論理などが主体となった場合は純粋な継承は出来得ない。また、師のカリスマ性や師への尊敬度が高いほど、真似はしたくないと思いつつも無意識に表現方法が類似していく。これは習う側の問題で、各々が意識的に表現方法を考えていく必要がある。

 書の表現方法が特に試行錯誤された1940〜70年代。漢詩や和歌を素材として条幅や懐紙などに墨で書くことが伝統的な書であるとすれば、それ以外の素材の選定や文房四宝の工夫をし、表現の新しさを追究する書家たちが存在した。その結果、ろうけつ染や漆芸、ボンド墨の作品、非文字作品、活字を用いた作品、立体作品が生み出された。照明やスモーク演出など展示会場の装飾にこだわった書展も開催された。その挑戦は昭和時代とともに終焉する。«現代の書(壇)のエネルギーが社会情勢を反映して»いるためか、あるいは表現方法の新しさよりも書の本質や独自性を問うようになったためか。「書とはなにか?」の良質な答えが見つからないまま、平成も終わろうとしている。「なんでも書」「だれでも書家」の今である。

 文字?非文字?書線?筆脈?造形?文房四宝?書論?一回性?個性?伝統?作家性?

 

2020年解散を結成当初から決めている僕らの書展に残された時間は少ないが、“イロハ”を中心に書の追究をしていく。

 

イ 現在の自分の表現方法を疑う。否定する。なにが残るのかを見極める。

ロ 明治以降の書道史を通観する。そして自分の興味関心事象を徹底的に研究する。 ハ 10代の頃に感じた書の楽しさは忘れてはならない。

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